マネジメント研究所
代表者プロフィール
活動理念
問題解決の手順
問題解決ツール
改善事例紹介
研究所 blog
リンク
ご連絡・ご相談はこちらから
powered by Movable Type 6.0.5
研究所 blog イメージ

研究所blog > 報酬の構成要素(4)


報酬の構成要素(4)

 

(1) 福利厚生(フリンジ・ベネフィット)

 福利厚生(フリンジ・ベネフィット)の代表例としては、有給休暇や現物給付、社会保険等がある。欧米企業での特徴としては、利用できる駐車場や食堂が一般社員と管理職とで異なっていることもある。また、アメリカ・シリコンバレーにあるIT企業では社員食堂が充実しており、従業員であれば無料で食事を取ることができる。一方、日本企業の特徴としては、住宅関連の福利厚生が充実しており、住宅補助を支給したり、独身社員寮や社宅を提供している企業が多い点が挙げられる。

 今後は結婚・出産を経た女性を支援するために、育児サポートするための保育施設や独自の育児休業制度の導入が増えることが予想される。なお、福利厚生については、法律に定められた福利厚生と、企業組織が独自に定めた法定外福利厚生に分けることができる。現在、法定福利厚生として、「健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労働保険料、児童手当拠出金、労働基準法上の休業補償のうち、企業が負担する分(従業員負担分を除く)」が定義されている。

 法定外福利厚生とは、前記の法定福利厚生として定められているもの以外のものである。ここからは日本企業の福利厚生について、最近の動向を見ていく。ここで取り上げるのは、次の3点を取り上げる。それは、「総報酬」「年金・退職金」「サバティカル制度」である。

1)  総報酬

 近年、日本企業組織においても総報酬という考え方が浸透してきている。総報酬とは、給与・賞与と福利厚生(フリンジ・ベネフィット)を合わせたトータルの報酬について、最適化を図るものである。例えばかつての日本企業では、従業員用に社宅を確保したり、郊外のリゾート地に保養所を設置したりしていた。しかし、近年では、企業組織が社宅や保養所の維持のためにかけているコストほど従業員がありがたみを感じておらず、従業員の動機づけにつながっているとは言い難い状況となっていた。

 このように過剰なコストとなっている福利厚生を提供するのではなく、個々のニーズに合わせて一定範囲の中から給与内容を選択するというカフェテリアプランを導入する企業組織も増加している。

2)  年金・退職金

 福利厚生のうち、大きなウェイトを占めている年金・退職金については、特に見直しが進んでいる。日本では1990年代の後半に、年金資産や年金債務に関する会計基準の変更と、バブル経済崩壊後の経済状況悪化に伴って運用利率が低迷したことにより、企業の年金債務が増加する事態となった。また、日本企業の年金・退職金制度は、年金資産の運用状況に関わらず勤続年数や給与等によって支給金額が決定する確定給付型の年金制度であり、転職者には不利で、人材の流動化を妨げるものであるとの意見も出てきた。

 このような流れを受けて、「日本版401K」とも呼ばれる確定拠出年金制度が導入された。これは、2001年10月に施行された確定供出年金法に基づくものであり、企業が一定の金額を掛け金として拠出し、年金加入者である従業員個人が資産運用を行うものである。この確定拠出年金制度の特徴としては、税制優遇されること、転職の際に前職の資産残高を持ち運べること、運用リスクは個人が追うことになどがある。

 従来の日本企業において採用されてきた確定給付型の企業年金は、厚生年金基金、規約型、基本型の3つのタイプに分けられていた。今のところ、確定拠出型の企業年金制度は企業のみが掛け金を拠出する企業年金と、加入者個人のみが掛け金を拠出する個人年金に分かれている。退職金については、その意義自体を根本から見直す動きが出てきている。

その一方で、退職一時金は通常の給与所得に比べて所得税がかなり低いことから、給与レベルが高いプロフェッショナル・ファーム(「パートナー」と呼ばれる経営者が複数集まって出資・経営する組織:欧米では会計事務所や弁護士事務所などが多い)などでは、敢えて給与の一部を後払い用に積み残し、退職一時金の形で支払う企業も存在する。

3)  サバティカル制度

 サバティカル制度とは、一定の条件を満たした社員に対して3ヵ月や6ヵ月の有給休暇を認めるもので、このような制度を導入している企業や団体が増えてきている。インターネット検索大手のYahoo! Japanでは2013年にサバティカル制度制度を導入している。同社では、勤続10年以上の正社員を対象として最長3ヵ月間の長期休暇を取得できるようにサバティカル制度を導入した。長期休暇の取得期間は2~3ヵ月の給与が「支援金」として支給されという制度となっている。

 同社のサバティカル制度は、社内で一定のキャリアを積んだ社員に対して、自身のキャリア経験、働き方を見つめ直し、考える機会を作ることで、更なる成長に繋げてもらうことを目的としている。これには、長期にわたる勤続を慰労するとともに、日常的になかなか時間を確保できない社会人学習やボランティア等の社会貢献活動への参加を促進するという意味がある。

 ここまでは、報酬の構成要素として主に金銭的報酬について述べてきたが、金銭的報酬を構成する基本給やインセンティブ、福利厚生は、時代の変化に合わせて変わってきており、また、報酬とは金銭的報酬が全てではないということも押えておかなければならない。

投稿者: 菊田富雄 | 日時: 2022年7月29日 | カテゴリ: 人材マネジメント

  


<< 前の記事   次の記事 >>


Copyright 2006 Management Lab. All Rights Reserved.