プロダクトライフサイクル(PLC)理論とは、製品を市場に投入してから撤退するまでの流れを、導入期・成長期・成熟期・衰退期という4つの段階を経るという考え方である。市場成長率が高い導入期から成長期にかけては多くの資金投下が必要となり、市場成長率が低い成熟期から衰退期には資金投下は減少すると考えられる。つまり、市場成長率の高さと事業に必要な資金の関係は、相関関係にあると考えられるとい理論である。
一方の経験曲線理論では、製品の生産量が多くなるほど、1個あたりの生産コストが安くなると考えられる。総生産量と生産コストの関係は、グラフにすると曲線はマイナスの相関)になるため「経験曲線理論」と呼ばれている。例えば、未経験のAさんがA社に、熟練したBさんがB社にいたとする。A社とB社は競合関係にあり、1時間に生産できる製品は、Aさんは30個ですがBさんは50個です。この場合、B社はA社よりも、生産効率が高いため1個あたりの生産コストは下がり、A社よりも優位に立てる。
したがって、相対的市場シェアが高ければ、生産量は増加していく。生産量が多いと、生産コストが下がり利益は大きくなる。反対に相対的市場シェアが低いと、生産コストは上がり利益は少なくなる。このように、PPM分析は、自社の複数事業や競合他社の分析に活用できるので、現在の自社事業や製品の状態を知り、経営資源の投資配分に優先順位をつけることができ、経営判断がしやすくなるというメリットがある。
しかし、PPM分析の大きな欠点がある。それは、市場成長率と相対的市場シェアの限られた2軸だけで事業の可能性を判断するため、事業に関係するさまざまで複雑な局面を把握したり予測できないことである。PPM分析は複数の事業の間にある関係性や連鎖反応を考慮できない。「負け犬」だと思われていた事業が、他の事業と関連があり必要不可欠な可能性も大いにあり得る。PPM分析は、現時点での市場成長率と相対的市場シェアの情報を元に判断する。
そのため、現時点の市場成長率や相対的市場シェアからわからない将来的な可能性を見過ごす恐れがある。PPM分析では市場シェアが低いと高い利益を生み出すのは難しいと考えるが、ベンチャー企業では例外が起こりえる。例えば、大企業では革新的な商品が生まれないという「イノベーションのジレンマ」と呼ばれる領域では、ベンチャー企業のようなシェアが低い事業でも、革新的な技術や商品を生み出すことで高収益ビジネスモデルを開発している。