バリューチーンとは、消費者が求める商品・サービスがそれらの原価や資源だけではなく、企業活動によって付加価値がつけられている。この付加価値(バリュー)をつけていく一連の活動(チェーンの連鎖)がバリューチェーンと呼ばれている。バリューチェーン分析は、具体的にどの過程で大きな価値が生まれているのか、どの過程が同業他社より優れ入るのか、あるいは劣っているのかを分析することで、戦略策定や改善策を考える。
バリューチェーンとは、マイケル・ポーター教授が自身の著書「競争優位戦略」の中で使用したのです。日本語では「価値連鎖」と表現されることもある。このバリューチェーンは、「主活動:購買・製造・出荷・販売・マーケティング・サービス」など、消費者に届くまでの流れに直接関係ある企業活動と、「支援活動:人事・労務管理・技術開発・材料調達」といった間接部門に属する活動の2つであることは、前項で述べた通りである。
ではなぜバリューチェーン分析が必要なのかというと、それには2つの理由がある。1つは、バリューチェーン分析を自社や競合企業に適用することで、消費者ニーズや市場変化を把握することができ、競合企業がどのような戦略をとろうとしているかが予測できる。それはとりもなおさず自社の戦略策定に役立ち、自社の競争優位性を高めることにつながる。もう一つは、自社の価値連鎖の中でどこが強みで、どこが弱みであるか把握できるということである。バリューチェーン分析は、次の4つのステップで構成されている。
自社がどのような主活動と支援活動を行い、顧客に提供する本質的な価値は何かを把握する。当然業種や業態によってバリューチェーンの定義は異なる。例えば、小売業:商品企画→仕入→店舗運営→集客→販売→サービス。製造業:購買→製造→出荷→販売→マーケティング→サービスという形になる。
2.活動ごとのコストの把握
上記の小売業の例でいえば、商品企画にどの程度の人材と時間を投入しているか、また、仕入れにかかる経費は幾らかなど、金額ベースで把握する。この時、年間のコストや担当部署なども併記するとより効果的である。
3.強み、弱みの分析
バリューチェーンを構成する各活動のどこが競合他社よりも強いか、弱いかを分析する。このステップでは、できるだけ多くの担当者から意見を集め、実情に即したものにすることが肝要である。部署や担当者によって、見解が異なることが予想されるため、それらに十分配慮する必要がある。
VRIOとは、「価値(VaLue)」、「希少性(Rareness)」、「模倣性(Imitability)」、「組織(Organization)」の頭文字をとったものである。ステップ3で明らかになった強みを、「経営目標達成に必要な価値はなにか」「希少性はあるか」「他者にマネされないか」「強みを発揮できる協働組織体制ができているか」といった視点で分析する。必要であれば、自社、他社を比較した表を作るとよい。
ここまでの分析が終了すると、バリューチェーンの中でどの活動が他社より強いか弱いかが見えてくる。これをもとに削減できるコストを捻出して予算配分を行い、競争優位の戦略策定へとつなげていくことになる。バリューチェーン分析は、できるだけ多くの部署、担当者がから情報を集め、バリューチェーンの全体像を把握するためのものであり、偏った情報のみで分析すると、企業の全体戦略にも大きな影響を及ぼす虞もあるので、十分に注意して行う必要がある。