企業の売上が低下し始めると、その原因がどこにあるのかという話題が持ち上がる。営業門では、価格設定が高過ぎるので競争力が低下しているのが原因だといい、製造部門では、営業部門の提案力が低下しているので、顧客の支持が得られなくなったという。このようなコンフリクトを解決するにはどちらの意見も説得力に乏しい。両部門はそれぞれの主張を曲げないまでも、自部門でも心当たりがないか点検してみことにはなる。
しかし、原因を特定するまでの分析は行わないのが普通で、犯人探しだけが延々と続けらるが、売り上げの回復に繋がる抜本的な改善案は見つからず、ついには迷宮入りになりそうになり、「顧客の心変わりが原因」という奇妙な決着を迎えることもある。こうした場合、本来は製品や価格、サービスだけではなく、原料の段階から最終顧客が消費する全ての段階において、各段階における付加価値の創造の流れをひも解いてみるしかない。
この場合の分析は、プロセス分析ないし工程分析であるが、企業の全般活動の管理体制や人事・労務、技術活動、調達活動などの支援活動も含めて考えるべきである。つまり、購買物流→製造→出荷物流→販売→サービスといった主たる活動と、これを支援する活動の連携であるバリューチェーンを考えることで、価値を生み出す源泉に近づくことができる。具体的には、自社の事業活動の流れの中で、どの部分を担っているのか、競争優位性の構築に寄与しているのはどの部分かを分析するフレームワークである。
バリューチェー分析をするには、まずビジネスの鍵となるステップを特定し、ビジネスのフローを大まかに捉え、次に、これをさらに差別化要素の大きいステップや、その活動にかかるコストが大きい要素を分解していく。ここまで分解できたならば、今度はそれらの要素で自社と競合企業との違いを業界のKFSに着目しながら分析する。こうした分析を通じて、バリューチェーンのどこに大きな付加価値をつけるべきかを見つけ出し、企業のコスト構造を構築する。
例えば、同じ書籍販売業でもアマゾンのようなネット販売書店とブックオフのような店舗販売書店ではバリューチェーンの構造が異なるので、自社の強みを生かしたKFSを発見することが課題解決のための鍵となる。すなわち、バリューチェーンとは、「価値連鎖」という意味であり、バリューチェーン分析とは、企業活動により顧客に価値を提供するための連鎖と捉えることらよって、企業活動を客観的に分析し、強み弱みを明らかにすることを目的にしたフレームワークである。
その具体的なフレームは、根底に「購買物流(原材料の調達)」→「開発・製造」→「出荷物流」→「マーケティング」→「販売」→「「サービス」といった主要活動の上に、「調達活動」「技術管理」「人事・労務管理」「全般管理(インフラストラクチャー)」などの支援活動が組み込まれている。なお、情報システムの必要性が高まってきていることから、最近は情報システムを全般管理から独立して5つの支援活動として分析することもあるが、いずれにしても、こうしたフレームで分析することにより、MECEに行うことができる。